「無償化」は「バラマキ」なのか

品川区では、私が3年前の区長選挙の公約に掲げた「子育て3つの無償化」(給食、保育料、医療費)を始め、教育分野で補助教材費・修学旅行・制服の無償化の他、障がい分野等でもそれぞれ「所得制限のない無償化」に取り組んできました。これに対し「バラマキ」であり、「本当に困っている人」のみを支援すべき、という指摘があります。本当にそうなのか、一緒に考えていければと思っています。
森澤恭子 2025.10.29
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何を「無償化」しているのか

私は、物質的に豊かな日本にあって、世界に比べ「幸福度」が低い状況(55位/147ヶ国・地域)に問題意識をもってきました。ウェルビーイング学会によると、幸福度を向上させる最も重要な要素は「人生の選択の自由度」「最低生活費の確保」としています。最低生活費の確保は、いわゆる「ベーシックインカム」と言えますが、これを担保するには莫大のコストがかかります。一方で「人間が自分らしく暮らしていくうえで不可欠な生活の基礎となる行政サービス」を無償化することは、必要な人が必要な時にしか使わないため、はるかにコストが低くすみます。お金をサービスに置きかえることにより、すべての人が権利として、他者と区別されずにサービスを使える社会に変えていく。区民にお金を給付するのではなく、だれもが共通に使う日常的生活を支える基礎的な行政サービスを等しく提供することは、共通のリスクに対する共通の備えを保障する、それを区民の税金で、社会全体で負担していくという、いわば社会保障システムなのです。よってこれは「バラマキ」ではありません。

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  • 「本当に困っている人」とは誰か
  • 「自己責任」の社会モデルからの転換が必要

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